ラベル表示の中で特に注目したいのは、「産地」と「熟成度」の記述について。どちらも国のワイン法によって 等級が厳しく管理されているため、品質を知る上で有力な手がかりになってくれます。
DOと書いて「デノミナシオン・デ・オリヘン」。これを直訳すると「原産地呼称制度」―――ちょっと堅苦しいですね。まあ、言ってみれば ワインの出生証明書のようなものと思えばいいでしょう。
スペインでワインを規制する制度が導入されたのは1920年代のことで、品質の高いワイン産地として、リオハ、ヘレスなどが指定されていました。これが原産地呼称制度のルーツと言われています。また当時、一部のワイン愛好家の間でスペインの「ラフィット」「ペトリュス」といわれた「ベガ・シシリア」の伝説が生まれますが、輸出されることはありませんでした。その後のスペインも内戦の勃発により、長い間ワインは鎖国状態にありました。
正式にDO(Denominacion de Origen)という名が表舞台に出たのは、1970年代に入ってから。樽熟成させたリオハのワインが銘醸地としての地位を確立しはじめた頃です。この呼称が認可されるためには、各地に設けられた原産地呼称統制委員会(Consejo Regulador)による厳しい条件(ブドウ栽培面積、使用ブドウ品種、植樹密度、1ha当たりの収量、醸造法、アルコール度数、総亜硫酸量、官能試飲検査など)をクリアしなければなりませんでした。しかし、リベラ・デル・ドゥエロをはじめとする地域で、ブドウ生産とワイン醸造の質が一気に向上、スーパースパニッシュと呼ばれるワインが世界のワインファンの心を捉えはじめます。そして21世紀に入ると、スペイン固有のブドウ品種を使った高品質なワインも次々に登場し、2010年現在70の地域がDOCaおよびDOの呼称を認定されています。
その一方、2009年8月にはEUのワイン法が改正され、優れたワイン産地を大きく二つのカテゴリに分けて表示することになりました。
しかし、従来から使われていた各国独自の呼称も使用が認められています。スペインでは6つのカテゴリーを設けていますが、保護原産地呼称(DOP)に相当する格付けは下記の【DOCa】~【VCIG】、保護地理的表示(IGP)に相当する格付けは【VdlT】です。
DOワインの中でも、特に厳しい基準で昇格が認められた高品質なワイン生産地。1988年に制定された格付けで、現在認められているのは1991年に認められたリオハと、2009年に承認されたプリオラートの2か所だけです。プリオラートではカタルーニャ語のDenominacio d’Origen Qualificadaを表示に使っています
厳しい基準に基づき生産されたワイン生産地。各DOは地域の管理委員会である原産地呼称統制委員会によって承認されます。2010年現在DOは68あり、スペイン高級ワインの中核的な存在です。10年間DOを保持してきたワインは、さらに上級の格付けを申請できます。
2003年のワイン法改正により採用された格付けで、一つの村で他とは際立って上質のワインを造っている畑に適用されます。元々カスティーリャ・ラ・マンチャ州政府が訴えてきた格付けで、それまで国際品種のブドウを使っていたため対象外だったブドウ畑も対象になりました。この認定は所属する州政府と自治体が行なっています。
このジャンルも2003年ワイン法改正により導入されたワイン生産地で、DOとVdlTの中間に格付けされています。規制はDOやDOCaほど厳格ではなく、5年間VCIGを保持してきた生産地はDOに申請することができます。
2010年現在このジャンルは46か所ありますが、重要性が高い地域はビノ・デ・ラ・ティエラ・デ・カスティーリャとビノ・デ・ラ・ティエラ・デ・カスティーリャ・イ・レオンです。まだVCIGやDOの格付けに昇格していない地域の大半をカバーしています。
格付けされていないブドウ畑で生産されたワインや、異なる地方のワインをブレンドして造ったワイン。地域名、ブドウ品種名、収穫年の表示は許されていない。
ビノ・デ・ラ・ティエラやビノ・デ・メサを庶民的な下町っ子にたとえるなら、DO/DOCaのワインは由緒正しい旧家の跡取りといったところでしょうか。各産地ごとに定められた使用ブドウの品種、植え付け密度、醸造法などの厳しい条件をクリアしているため、品質の確かさは保証ずみ。 失敗の少ないワイン選びをしたいなら、DO/DOCaのラベル表示があるものから選べ!ということになります。
とはいっても、ビノ・デ・メサやビノ・デ・ティエラの中には、DO/DOCaに負けず劣らずの出来に仕上がっているものもあり、なかなか侮れません。ともあれ、こちらは値段は比較的安いので、いろいろ買って試しながら好みの味を見つけるのもいいでしょう。
原産地呼称とは別に、品質を測るもうひとつの手がかりとして、熟成年数別の格付けがあり、DO以上のワインはすべて以下の4クラスのいずれかに分類されたうえでラベルに明記されます。
高級度は1~4の順。品質の有力なバロメーターであることは間違いありませんが、Gran Reservaのコクと気品に思わずうなる一方で、ホーベンの若々しい味わいはまた違った意味で魅力的。また近ごろは、こうした表記をしないワインにも目を見張るものが多数登場しています。季節や好み、合わせる食事に応じて、自分にぴったりの1本を選ぶといいでしょう。